忍者ブログ
吸血鬼を主題にしたオリジナル小説。 ヴァンパイアによる支配が崩壊して40年。 最後に目覚めた不死者が直面する 過渡期の世界
| 管理画面 | 新規投稿 | コメント管理 |
ブログ内検索
最新コメント
[09/13 弓月]
[11/12 yocc]
[09/28 ソーヤ☆]
[09/07 ぶるぅ]
[09/06 ぶるぅ]
web拍手or一言ボタン
拍手と書きつつ無音ですが。
むしろこう書くべき?
バーコード
カウンター
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
プロフィール
HN:
久史都子
性別:
女性
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 ひと月後に村を訪れたとき、あの娘はすでに支度を整えて代理人の館で待っていた。

 憔悴しこわばった顔の中で、悲壮な決意を宿した瞳だけが目立っていた。優しく微笑みかけて、部屋に来るよう命じる主にひざを曲げて感謝の言葉を述べた。
 「この間は、せっかくのお召しを断り、とても失礼な振る舞いをしてしまいましたのに、寛大なるご慈悲を、ありがとうございます」
 安堵し喜んでいるような口振りだった。
 こけた頬に静かな笑みさえ浮かべて、娘は主の待つ二階の奥へ消えた。

今度は娘を助け出す勇者は現われなかった。不可解だった。

 「あの、ラウルとかいう青年は?」
 今頃、主に賞味されている娘の姿を頭から追い出して、ドルクは代理人に尋ねた。

 「多分、酒場で飲んでいるでしょうな」
 「恋が冷めたのですか……」
 「二人の仲は以前より深くなりました。離したくはなかったでしょうが……どうしようもありません」

「カリーナの家は兄弟が多いが、働き手の父親が死んで借金も多い。病気の祖父もいる。ラウルはまだ徒弟で収入がありません。家族思いのいい子達だから、駆け落ちは出来なかったのでしょう。
 結局お慈悲にすがって、“対価”で家族の窮状を救う以外の道はあの娘にはありません。
これで良かったのですよ。
 痛みは感じないし、嫌な気分でもないとこの前の事で知っていたから、カリーナには迷いはありませんでしたよ。
ラウルは……可哀想でしたがね」

 その時、おずおずとノッカーを掴む気配が、鋲つきの扉の向こうにあった。

一つ戻る 次へ

拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
NAME:
TITLE:
MAIL:
URL:
COMMENT:
PASS: Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
≪ Back  │HOME│  Next ≫

[10] [1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [12]

Copyright c 夜に紅い血の痕を。。All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog / Material By Mako's / Template by カキゴオリ☆
忍者ブログ [PR]