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吸血鬼を主題にしたオリジナル小説。 ヴァンパイアによる支配が崩壊して40年。 最後に目覚めた不死者が直面する 過渡期の世界
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「ぶどう酒と毛織物以外、ロクな産物がなかった貧しい流刑地とは思えない取引額だ。
帳簿に書かれている明細を信じるなら、ファラ様や他の太守たちが宝石よりも大事に抱え込んでいた細工師や織工、絵師に陶工に指物師…私がどんなに書簡を送っても、末の弟子さえよこしてくれなかった名だたる工房が、バフルとクインポートに集まっていることになる」
帳簿をめくる主の口元に、自嘲的な笑みが浮かんでいる。

「人同士の争いや街道での略奪が当たり前になった中央大陸から、平安を求めて東大陸に大勢の者が渡って参りました。その…毎年の様にアレフ様が送っておられた書簡が、彼らに渡航の決意をさせたのでしょう」
それは違うだろう」
即座に否定する主を前に、ドルクは口をつぐんだ。書簡を渡航許可証代わりに握り締めてきた者達はいたが…それはわずか数名にすぎない。

「周りを囲む海を盾に、最後まで我を通したがる時代遅れなガンコ者の土地だからだろう。ここを本気で潰したければ、ファラ様がしたように瘴石と重水から作り上げた劫火で焼き尽くすしかない」

昔話が本当なら
ここは、ファラ・エル・エターナルがもたらした平安を最後まで受け入れず、何もかも焼き尽くされた反逆の大地…土の中にいるという目に見えない生き物までもが死に絶え、何千年ものあいだ一本の樹も生えない不毛の大陸だったという。
ならば船を作って逃げることも叶うまいと、時おり反抗的な人々とその血縁者が、半ば捨てられるように送り込まれたとか。

このクインポートの周囲に広がる始まりの森。
あの木々の根には一つづつドクロが抱え込まれているという伝説もある。それだけ多くの罪人が野垂れ死んだという意味かと思ったが、そうではないらしい。

人の力で、雨に流される土を押しとどめ、草を育み、木を植え…クモの糸でジュウタンを織るような、気の遠くなるほどの手間と時をかけて、人が住める土地を少しずつ増やしてきた。名も無き祖先達が成した偉業を誇る伝説だと教えて下さったのは、アレフ様のお母上様だったろうか。

北の空にかかる月と同じ色の髪を結い上げ、肌を守る黒いヴェールを指先で少し上げて、木陰で書物に親しんでいた美しい横顔を、いつしか主に重ねていた。

誇りなのだと言われても、骸骨を抱く森を不気味だとしかドルクは感じなかった。
手を抜けばたちまち雑木がはびこり、畑も村も森に飲み込まれてしまう故郷とは、風の軽やかさからして違う土地。世界で一番小さな乾いた大陸は、500年近く過ごしてきた今も、ドルクにとって異郷だった。

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物語がゲーム用の設定だった頃、東大陸のモデルは英国と米国でした。第二次大戦時ナチスに追われた科学者や文化人の多数亡命による興隆を歴史背景に引っ張ってきた時「ヨソでばっか核実験してる英国に妄想の中でくらい」と中性子爆弾を落としてしまいました。

しかし媒体の違いで東大陸が南半球に移動してしまった小説版では、この物語はフィクションであり核の使用を肯定する趣旨の作品ではないと前置きした上でも、こう記さずにはいられません。

マラリンガやエミュー・フィールドで英国軍が繰り返した核実験は許しがたい愚行であり、被爆されたアボリジニの方々が今なお苦しんでおられる事は忘れてはならない現実です。

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