目覚めたのはついさっき。
まだ生きていた…。
意外だった。あのままオオカミの餌食にされるものと思っていた。
痛む手をさすり立ち上がる。
仲間達はどうなったのだろう。いずれにせよ使命に失敗したのは事実だ。彼女達は分断され、一人ずつ捕虜にされた。
一応手首以外はケガをしていない。装備は全て奪われてはいるが体一つで生き延びる術は習っていた。
まず鉄格子を確かめる。ビクともしない。扉は大きくカギがかかっていた。鉄格子の向こうは通路のようだった。
仲間の名を呼んでみた。気絶から覚めた事を敵方に知られても、状況に大した違いは無いだろう。
「無事だったか…」
ほっとした声が左隣からした。混乱して剣を振り回した聖騎士だ。
右隣から呻き声がして身を起こす衣擦れの音がした。
「ここは?」
最初にいなくなった司祭のまぬけ声だった。
「牢屋よ」
彼女は冷たく言い放った。
「あんたが捕まったからこうなったのよ。何ぼんやりしてたの?」
「突然、毛むくじゃらの手に口を押さえ込まれて、当て身を……ああっ。全部とられてる。魔除けの腕輪まで」
もごもごした言い訳のあと、やっと状況を把握したらしい悔しそうな声がした。
「もう、未練がましいわね」
「だってこれじゃ、ほとんど裸じゃないか」
彼女はため息をついた。
「それにしても、なぜ俺達を生け捕りにしたんだろう」
聖騎士の声が不思議そうに問う。
「いつ出してくれるのかなあ」
司祭がどこか情けない声で嘆く。
私が知るわけないでしょ。という言葉は飲み込んだ。
仲間内で言い合いしてても何にもならない。向こうの出方を待つしかない。まさかこのまま飢え死にさせるとも思えない。食料は差し入れてあるのだ。食事が日に3回なのか1回なのかは分からないが、いずれ誰かが来るはずだ。
「聞けばいいでしょ。苦労して捕まえた捕虜を放っておくとは思えないし」
「このパンとスープのおかわりか?」
「そう。ところで」
誰が最初に毒見をする?そう尋きかけた時、わずかに光が陰った。
牢屋をほのかに照らしていた明かりは通路の向こうから石壁を反射して届いているものだ。誰かが来る。耳をすませたが足音は聞こえない。彼女はこぶしをつくって身構えた。
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