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吸血鬼を主題にしたオリジナル小説。 ヴァンパイアによる支配が崩壊して40年。 最後に目覚めた不死者が直面する 過渡期の世界
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長い眠りについた理由も村の老女から聞き出すことが出来た。
40年前、英雄モル司祭長がファラ真始祖を倒した。そしてファラの魔力でヴァンパイアとなった女が一人滅びた。ここの城主の愛人だったらしい。それが全てを投げ出した理由との事だった。

軟弱だ。
そんな城主に仕える手下も強くは無いだろうと高を括っていた。
実際、山腹にうがたれた城に通じる地下通路の入り口を守っていたワーウルフは、こちらの姿を見るなり、持ち場を捨てて逃げ去ってしまった。

地下通路の入り口で魔法陣を描き上げ城内にブロブとスモークそしてジンを召還した。運が良ければ連中が全てを片付けてくれる。よほど運が良ければだ。

最年少で力の落ちたバンパイアとはいえ、ここの城主は始祖の一人だ。死の眠りをむさぼる棺の回りには、魔力で結界が張られているだろう。召還した低級の魔物では破るのは無理だ。結局は彼女たちが直接とどめを刺さなくてはならない。

聖騎士が剣を構えて前に立ち、何かあったときの為、常に補助や回復の法術を準備して彼女が続き、しんがりを攻撃呪担当の司祭に固めさせて、慎重に歩を進めた。
山腹から城へ続く地下通路は、湿気はあまりなく天井は高かったが、侵入者を迷わせるためか、枝分かれして入り組んでいた。もちろん照明はなく、手にした松明の光だけがたよりだった。

だが、敵はいなかった。いくつかの袋小路で引き返す間に見かけたのは、彼女たちが召還した魔物だけだった。
いつしか、油断が生まれていた。

ふと違和感を覚えて振り返ったとき、後ろをついてきていたハズの新人司祭の姿は、消えていた。前を行く聖騎士を呼び止め、松明を背後の闇に掲げる。光の届かない闇へ溶けて消える通路には不審なものは何も見えなかった。

「冗談は止めろよ!」
イラついて銀の盾を壁に打ち付けて叫んだ聖騎士の声が空しく響いた。いくらなんでも敵の牙城でこんな質の悪い冗談をする理由などあるはずがない。彼女たちは引き返した。
道が二股に分かれた所で立ち止まった。どちらに連れ去られたのだろう。どちらも行止りだった。

隠し通路を見落としていたのかも知れない。そう言おうとした時、突然無数の気配が生まれた。

一ひろはあるジャイアントバットが鋭い声を上げながら、頭上を舞い飛ぶ。スタッフで応戦するが数が多い。聖騎士も剣を振りまわしているが、攻撃呪の使える司祭がいないのはつらい。

コウモリたちが突然去り、ほっとして振り返った彼女の目の前に剣が迫っていた。
「何するのよ!」
避けた直後、今まで立っていた敷石に剣がぶちあたり火花が散った。カブトの奥を見てはっとした。目が恐怖に見開かれている。彼女を見てはいるが仲間だと分かっていない。
術にかかっている。
テンプルで開発した混乱の呪に似た術。あのコウモリどもは単なるうるさいペットではなく、多少の魔力を付加されたタチの悪い守衛だったようだ。

剣が迫る。かろうじてスタッフで受け流すが手がしびれた。正気に戻す方法が分からない。一時避難するしかない。

彼女は弾けるように後ろへ飛び下がるとその場を逃げ出した。背後で見えない敵に向かって剣を振り回す聖騎士の影が、松明の光の中で揺れていた。

暗闇の中、火口箱で新しい松明に火を付けようとした時、手をねんざしているのに気づいた。愚かな同士討による負傷。
引き返すべきなのかも知れない。さらわれた仲間の事は諦めて、聖騎士が正気に戻ったら、一緒に山を下りるべきだろう。

この程度のキズで回復呪を使うべきか悩んでいた時、ふと暗闇の中に青い光を見た。次々と増えていく点。
うなり声を聞くまでもなくオオカミの群れだ。

彼女は立ち上がり、じりじりと下がった。
向こうには混乱した危険な仲間がいる。
どうしようかと思ったとき剣の響きが聞こえない事に気づいた。
もう正気に戻ったのか?

わずかな希望を頼りに彼女は走った。
後ろからいつ獣の群れに襲いかかられひきずり倒されるか…焦りを胸に全力で来た道を戻った。

松明の明かりにたどりついたとき彼女は立ちすくんだ。そこにあったのは転がった松明だけ。聖騎士の姿は消えていた。
背後で鍔なりがした。
「いたんじゃない…」
安堵の言葉は途中で消えた。

すぐ後ろに立っていたのはオオカミの群れを率いたワーウルフだった。ミゾオチにワーウルフの持つ剣の柄が食い込んだ。
意識が闇に沈む前、獣と人が入り混じった顔が笑みを形作るのを見た。
「ちょうど、良いところに来てくれた」
何が?問い返す前に彼女は気を失った。

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