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吸血鬼を主題にしたオリジナル小説。 ヴァンパイアによる支配が崩壊して40年。 最後に目覚めた不死者が直面する 過渡期の世界
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久史都子
性別:
女性
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 ひと月後に村を訪れたとき、あの娘はすでに支度を整えて代理人の館で待っていた。

 憔悴しこわばった顔の中で、悲壮な決意を宿した瞳だけが目立っていた。優しく微笑みかけて、部屋に来るよう命じる主にひざを曲げて感謝の言葉を述べた。
 「この間は、せっかくのお召しを断り、とても失礼な振る舞いをしてしまいましたのに、寛大なるご慈悲を、ありがとうございます」
 安堵し喜んでいるような口振りだった。
 こけた頬に静かな笑みさえ浮かべて、娘は主の待つ二階の奥へ消えた。

今度は娘を助け出す勇者は現われなかった。不可解だった。

 「あの、ラウルとかいう青年は?」
 今頃、主に賞味されている娘の姿を頭から追い出して、ドルクは代理人に尋ねた。

 「多分、酒場で飲んでいるでしょうな」
 「恋が冷めたのですか……」
 「二人の仲は以前より深くなりました。離したくはなかったでしょうが……どうしようもありません」

「カリーナの家は兄弟が多いが、働き手の父親が死んで借金も多い。病気の祖父もいる。ラウルはまだ徒弟で収入がありません。家族思いのいい子達だから、駆け落ちは出来なかったのでしょう。
 結局お慈悲にすがって、“対価”で家族の窮状を救う以外の道はあの娘にはありません。
これで良かったのですよ。
 痛みは感じないし、嫌な気分でもないとこの前の事で知っていたから、カリーナには迷いはありませんでしたよ。
ラウルは……可哀想でしたがね」

 その時、おずおずとノッカーを掴む気配が、鋲つきの扉の向こうにあった。

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