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吸血鬼を主題にしたオリジナル小説。 ヴァンパイアによる支配が崩壊して40年。 最後に目覚めた不死者が直面する 過渡期の世界
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馬車を降り、とにかく急いで欲しいとドルクが呼ぶ方へ向かったアレフは、月明かりの中を舞う奇妙な鳥と、全身に火をまとった犬のような生物に囲まれたティアを見て、立ち止まった。
「それは…なんだ?」
「ピエロバードとファイアドッグよ」
犬の横っ面をスタッフではたきながら、ティアが叫ぶ。では、これらもテンプルの者によって異世界から召喚された生き物たちか。

「アレフ様、すみませんが氷の呪を…」
いきなりそう言われても、ノームに羽根が生えたようなピエロバードも、草を焼いて走る火の犬も動きが早い。その上、草に燃え移った炎はドルクとティアを分断し事態はどんどん悪くなっていく。1体1体に氷の方陣を組んでいては間に合わない。

だからといって火刑台の時の様に全てに術をかけて、2人の蘇生と回復はイモータルリング任せでは一体でも仕留め損なった時の対応が…そうか、イモータルリングを中心に防御結界を組んで装備者を保護してから術を使えばいいのか。
元々魔力を中継する術具。
我が身を結界に包むのと同じ要領で出来るはず。

目を閉じて意識を不死の指輪に飛ばす。指輪のまわりに対術障壁を巡らせてから、ここで動いているモノ全てを囲む大きさの方陣を組み、熱を奪う呪を唱えた。

発動と同時に空中の水分が白い霧に変じて、周囲を薄ぼんやりとした優しい月明かりに包む。奇妙な鳥たちが地面に落ちてつぶれる音と、炎を失った体の奥で儚く消える犬たちの生命を感じた。どちらも穏やかな景色には似つかわしくない感触。心の奥が軋む。

「へぇー、意外とやるじゃない」
霜をまとった死骸をスタッフで突いているティアに、聞かずにはいられなかった。
「なぜ、そんな哀しい生き物たちを放置する?そもそも、何のためにテンプルは異界の生物を召喚する?」
「あんたを倒すため」
スタッフをまっすぐ向けてくるティアの前に、ドルクが立ちふさがる。

「そうやって、従者や操兵や使い魔に守られているヴァンパイアを、精鋭とはいえ少人数で倒すなんて無理だもん。護衛を誘い出して守りを手薄にしてくれる、使い捨ての味方が要るわけ。
野に放たれたコイツらが家畜や人を襲ったら、城の衛士を派遣しなきゃならなくなる。城の中にコイツらを召喚すれば危ないペット達や残った護衛の手もふさがる。
今だってあたしとドルクを足止めしてた。馬車に残ってたのはアレフ1人…暗殺には絶好の機会だったでしょ」

「確かに…うまいやり方だ。手段の汚さはともかく」
「この程度で汚いなんて言ってたら、バフルじゃ気絶するわよ。多分、すごくエグい事してるハズだから」
思わず北の地平に目を向けていた。ここからでは街の灯など見えるはずはないのに。
普段は明るく感じる北の空が、不安のせいか暗く見える。

「あたしも実際に見てないから、行ってみないとモルが何やったかはハッキリ言えないけど。急ぐんでしょ」
先に立って馬車に戻るティアの背中を見ながら、もう一つ疑問が湧いてくる。

「その、テンプルの術や、戦い方を…何で私に教えてくれる?」
テンプルに居場所は無いと言ったものの、彼女は外見も中身もかたくなに聖女見習いのままだ。不死者を滅ぼすのが存在理由なら、奥義を宿敵に明かすのは裏切り行為ではないか。
「…聞かれたから。っていうか、教えて欲しいから聞いたんじゃないの?」
振り返ったティアに真顔で問い返されて、混乱する。どうも何か根本的な部分で規範が違う。その違いが何なのか…答えを知っているのに理解できない。そんな歯がゆさを感じていた。

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