忍者ブログ
吸血鬼を主題にしたオリジナル小説。 ヴァンパイアによる支配が崩壊して40年。 最後に目覚めた不死者が直面する 過渡期の世界
| 管理画面 | 新規投稿 | コメント管理 |
ブログ内検索
最新コメント
[09/13 弓月]
[11/12 yocc]
[09/28 ソーヤ☆]
[09/07 ぶるぅ]
[09/06 ぶるぅ]
web拍手or一言ボタン
拍手と書きつつ無音ですが。
むしろこう書くべき?
バーコード
カウンター
カレンダー
03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
プロフィール
HN:
久史都子
性別:
女性
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

髪飾りのように張り付いている、見えない使い魔にティアはそっと触れた。本物のコウモリと違って視覚も鋭いこいつが私の目の代わり。テオのカブトにも張り付いてるけど、気付いてないだろうな。屋内でどう戦えばいいか考えてもいないウッカリさんだから。

あたし達が腹ごしらえしている間に、アレフが飛ばした使い魔は他にも8羽。城の内外に散らせて、音で敵の位置を知らせてくれている。

東の棟で警戒していた者の半数、12人ばかりが中庭を突っ切ってこっちに向かってる。残る10人は窓や塔の見張り台に張り付いてる。泥団子が投影してるあたしたちのニセモノ。ソコソコ役に立ってるみたい。

北棟には誰もいない。少し前まで西日が射してたせいかな。温室だの植物園だのに、誰も関心がないだけかも。あたしなら金になる薬草を根っこごと掘り出すけど。

西棟は…広間と階段に集まりだしている。
「ふぅん、バックスって意外とマトモなんだ」
際限もなく吸血鬼を増やしてるから、てっきり破滅的なヤツだと思ってた。残念、自分の手であたしらを殺しにくるような、イカれたヤツじゃなかったか。

やっぱ、こっちから行くしかないな。
「一気に上がるわよ!」
ナイフが鼻骨を砕いて柔らかな脳幹に埋まりこんでゆく感触、なんてモンが残る足先を見つめているアレフの背中を叩く。ほっとくと、相手の過去とか妄想しだして際限なく自己嫌悪とやらにハマってく。考えるヒマを与えないのが一番だ。

「おう」
 勇ましい返事を返してくれるのはテオだけか。とっておきの可愛い笑顔でうなづいてやったら、勢いよく駆け上がって…。
「うわぁ」
悲鳴と石が落ちる音。黒い風になってアレフが後を追う。

崩れてる階段って、ここだったんだ。足クジいたかな。首の骨とか折ってたらちょっと困る。狭い階段の下から見上げたら2人折り重なってヘたりこんでた。テオは肩で息してるけど無事みたいだ。アレフはなぜか固まってる。

「助かったよ。意外と力、あるんだな」
身を起こしたテオが笑顔で手を差し出す。引き起こされながらアレフは困った顔してる。
「いえ、その夢中で」

背中に剣、腰に斧。クサリのヨロイに鉄の防具に男1人分の体重。それをあの細腕で引き上げたら、さすがに人間じゃないってバレるか。

「バァさんが火事になった家から、孫をブン投げるってコレか」
え…そう解釈するんだ。
いや、間違ってはいないのかな。死人の怪力って筋肉や骨が壊れてもすぐ再生するから、無茶が効くだけか。元は人だし。

やべ、アレフと一緒にあたしまで考え込んでた。

「裏階段が使えないなら、右の園遊会用の配膳室から中庭を突っ切るわよ」
抗議を無視して風の呪を唱える。フトコロから出した小瓶の栓を抜いて傾け、聖水をつむじ風に乗せた。

先陣きって走りこんできた3つの人影が、顔を手でおおって転げまわる。
「火炎呪を!」
炎が引き起こす結果を考えさせないよう、強い口調でうながした。アレフが放った小さな火球が、入り口で怯んで立ち止まった数人をかすめ、中庭の草を燃やす。信じられない。多勢に無勢で、手加減するか、ふつう。

ドルクが1人射抜いてくれたけど、残り8人をどうしよう。
「オレが叩きのめす!」
オノをぶん回しながら、テオが突っ込んでいった。さっきカッコ悪かったから、その分ムキになってるとしか思えないけど。

しょうがない。
無謀なテオの背中を守るために小瓶を投げつけ、スタッフを構えて配膳台を跳び越えた。上からの一撃を避けられるのは計算済み。方向を変えた下からの足払いですっ転ばせて、喉を潰す。

ここでやっと本気になってくれたアレフが、火球で1人の頭を焼いた。怯んだ別のヤツに、テオが深手を負わせる。反撃も受けてるはずだけど、いい暴れっぷり。さっき肩をやられた時、あまり痛がってなくて変だと思ったけど、戦ってる時は痛みを感じないタチなんだ。

少し離れてたヤツにオノを投げつけて、テオが中庭に駆け出しながら背負っていた剣を抜いた。重くて長い鉄のカタマリをぶんまわす力は大したモノだけど、やっぱ遅いから避けられてる。
だったら…

「押しちゃえ!」
風精に命じて突風をぶつけた。踏ん張って重量物を回してるテオはビクともしない。けど体の軽そうな1人が、よろめいて大剣にかかった。なんとかと刃物は使いよう、かな。

「助けを呼んでこなくてよろしいのですか?お味方はもう半分以下でございますよ」
矢をつがえたドルクの言葉に、浮き足立った1人が西棟に向けて走り出した。つられた様に残りも逃げていく。

「テオを治したら追うよ!」
草はあまり燃え広がらない。しめってるせいかな。バックスと戦ってる最中に火事になって蒸し焼きに、なんてバカバカしい死に方せずに済むからイイけどね。

「軽い打ち身。かすり傷程度ですね。あんなムチャな戦い方をした割に、筋肉やスジを傷めてない」
治癒呪をかけるアレフに、剣を杖代わりにしてたテオが、ウィンクしてる。
「そんなヤワな体じゃないさ」

ちょっと見直した。
英雄志願の単純バカ。せいぜい消耗したアレフを回復させるための生き血の提供者ぐらいに思ってたけど…これならホーリーシンボルを完成させるまでの足止め役として使い物になるかもしれない。

一つ戻る  次へ


拍手[0回]

PR
この記事にコメントする
NAME:
TITLE:
MAIL:
URL:
COMMENT:
PASS: Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
≪ Back  │HOME│  Next ≫

[202] [203] [204] [205] [206] [207] [208] [209] [210] [211] [212]

Copyright c 夜に紅い血の痕を。。All Rights Reserved.
Powered by NinjaBlog / Material By Mako's / Template by カキゴオリ☆
忍者ブログ [PR]