お船にのって新しい白いお家にきてから、お母さんが遊んでくれない。いつもお話してくれてた使用人もみかけない。外にでてお友だちをさがすのもダメって言われた。
だからジミーは、今日もオジサンがいるハナレですごしている。高いカベにはバラのつるが登って赤や黄色い花を咲かせてる。
「ジミーのおふくろさんは偉い人だ。仲間と寄付を集めて基金ってやつを作った。それでオレらみたいなハグレもんの自立支援ってヤツをしてる。東大陸から渡ってきて、何かヤバいことに巻き込まれたり、しくじったり、病気になった人を手助けしてるんだ。今は、商館に掛け合って大きい別館を建てて、治療院やら子供の預かり所やら…」
お母さんをほめられるのは、うれしい。でもおじさんの話しはムズカシくてよく分からない。本をよんでほしくて、黄色いひざかけの上にお気に入りの青い絵本をのせた。
「ジミーは冒険が大好きなんだなぁ。うん、男の子はそれぐらいがいいな」
「おかしの島が出てくるでしょ、そこよんで」
おじさんのまわりでぴょんぴょんとんだ。おじさんはすぐ息切れするから、おにわを歩いたりできないけど、イスにすわってる時は何ども本を読んでくれる。
おじさんが本をひらくと、おかしの島の絵が見えた。
「でも、お菓子の島には、不死身の巨人が住んでるんだよ」
「ボクこわくないよ。心ぞうが入ってるガチョウのタマゴを見つけるから。つぶしちゃうよってオドかして、宝物のかくし場所をきいたら、ぐしゃってするから」
「そっか、ジミーは賢いもんなぁ」
おじさんが笑う。だけどセキをはじめたから、水さしを取りに行った。おじさんが苦しそうだし、今のうちにいっぱい親切にしてあげなさいって、お母さんに言われてるから。
おじさんのセキがおさまって、やっとおかしの島の話がはじまった。
ページをめくるおじさんの手に巻いてある赤い布は、お母さんの首に巻いてある布とおそろい。いっしょにいると、なんだか安心する。
昔、おじさんは悪い人だったって、お父さんが言ってた。
だから、おじさんがハナレにいる事はボクたちだけの、ヒミツ。
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