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吸血鬼を主題にしたオリジナル小説。 ヴァンパイアによる支配が崩壊して40年。 最後に目覚めた不死者が直面する 過渡期の世界
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動きを止めた黄金の自動人形と対峙《たいじ》されているアレフ様を意識しながら、ドルクは斧の柄をつかんだ。
通路と青白い大扉の後ろに小さな気配が増えていく。中庭の窓に貼り付くチーズ大の丸い影は、無人の城を守り整えてきた小型のオートマトン。夜空を模した丸天井を頂くこの広間はすでに囲まれている。

他の太守方と違って、シーナン様がもちいておられた眷属は生き物ではなかった。外見は愛らしくともフタを開ければ歯車だらけの時計と同じ。体も心も硬く融通が利かない。しかも独特の言葉で互いに繋がっているという。

アレフ様が掲げる水晶玉の周囲でまばたく淡い光。首尾よく説得できれば良いが…。一つ一つは非力でも連携されると金色の巨人より厄介な敵となる。

階段裏の扉が開く音に、心臓が跳ね上がった。ガラスの眼をもつ青い髪の女がエプロンドレス姿で立っていた。その足元には数個の白い円盤。同時に広間に通じる正門以外の扉が開き、無数の白い円盤が流れ込み、黒い床を渦となって巡りはじめた。

ティアの悲鳴。
不用意に踏み出した足を円盤にすくわれたか。
素早く体の下に入り込んだ円盤たちがナワの様な細腕で器用に支える。頭を打つのはまぬがれた様だ。しかし、そのまま手足を拘束され城の奥へ運ばれていく。ティアを助けに行きたくても、円盤たちに阻まれる。すり足では到底追いつけない。

アレフ様の舌打ちを聞いた。掲げておられた水晶玉を握りしめベルトの物入れに戻す。
人にはあり得ぬルリ色の髪を結い上げた女中が一歩、広間に足を踏み入れると円盤たちの動きは止まった。
「君はファースト、いやセカンドかな」
「ロビィ・フィフィスです、アレフ様。他の4体は侵入者に破壊されました。比較的、破損が少なかったわたくしの修理に使用したのち破棄。ファーストとセカンドの記憶はわたくしが引き継ぎました」
「顔も?」
「わたくしの頭部はセカンドの物です」

「先ほどトルタ達が運んでいった私の連れを、返してもらいたいのだが」
連れ…東大陸でよく使っておられた言い回し。ほんの少し前の事だというのにドルクは懐かしさを覚えた。

「失礼いたしました。被服で我が主を滅ぼした一員と誤認してしまいました。転化なさったと認識しておりましたが、ネリィ様はまた生身でいらしたのですね」
生身の娘が40年経っても同じ年恰好でいると思うあたりが自動人形らしい。それに髪の色は同じダークブロンドだが、ティアの眼は紺色、ネリィ様は褐色。まさか経年変化の範囲とでも思っているのだろうか。

「ところでアレフ様、このたびのご訪問の目的をまだ、お伺いしておりません。水晶玉を使っての無断開錠。ガーディアンへの干渉、そしてわたくしの管理領域への侵入。この城と領地をご所望なのでしょうか」
「この地への野心は無い。私は会いに来ただけだよ。ロビィ・ゼロはまだ居るかな」
「地下の研究室に。近いうちに活動限界がおとずれますが、まだ動作中です。ご案内します」
ガラスの眼を伏せ、自動人形が地下へいざなう。

なめらかに下る地下通路の途中、白く発光する円盤に先導されたティアと再会した。
「あたしミイラだらけの牢屋に入れられたんだよ。ったく、気持ち悪いったら」
言われてみると、ティアの服にはカビとほのかな死臭が染み付いている。

「侵入者は生け捕りにして牢に繋ぐよう、命じられておりますので」
そのこと自体は間違っていない。ドルク自身、城に侵入するものがあれば、自動人形たちと同じ対応をする。だが…罪人を裁き、血と引き換えに赦すハズのシーナン様は既にない。

「それで、虜囚に水や食事は与えているのですか?」
「いいえ、水や食事の事は命じられておりません」
虜囚たちの無意味な死に気が滅入る。自動人形のこういう悪意の無い残酷さは、好きになれない。

行く手に鏡の扉が見えてきた。アレフ様の姿だけが映っていない銀色の扉に、青い髪の自動人形が手をかざした。横にすべっていく鏡の向こうに、もう1体の自動人形が待っていた。髪の色は淡い緑。

「…あ れ ふ サマ…」
 たどたどしい、かすれた声。だが懐かしい。この自動人形には昔たしかに会ったことがある。海と大地を走る黒い船を受け取る旅にお供した際、ドルクは彼女に会っていた。

「久しぶりだね、ロビィ」
アレフ様が呼ぶ。彼女はただのロビィ。当時、自動人形は彼女ひとりだった。

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